第18回(2010年度)整数論サマースクール
「アーサー・セルバーグ跡公式入門」
- 目的
アーサー・セルバーグ跡公式の入門および最近の発展について学ぶことを目的とする。
- 趣旨
アーサー・セルバーグ跡公式は、アイヒラーとセルバーグによって独立に1950年代の同時期に発見されました。それ以降、現在に至っても跡公式の理論は大きく発展を続けており、保型形式、保型表現、そしてセルバーグゼータ関数などを研究する上で不可欠な理論となっています。この研究集会では、アーサー・セルバーグ跡公式の基本的な仕組みと、その具体的な応用について理解してもらうことを目的としています。跡公式に馴染みのない方にも理解してもらえるように、出発点であるセルバーグによるSL(2)の跡公式についての解説から始めます。そして、跡公式の基礎理論から先端の安定跡公式まで、具体例を交えながら解説する予定です。
- 参加対象
原則として数学系の大学院に属する学生および大学・高専等の数学教員
- 講演予定者(敬称略)
伊吹山知義(大阪大学), 今野拓也(九州大学), 権寧魯(九州大学), 都築正男(上智大学), 平賀郁(京都大学), 森山知則(大阪大学), 安田正大(京都大学), 若槻聡(金沢大学).(並びは50音順)
- 参加者のための予備知識および基本文献
サマースクールでの講演を理解するためには、以下の基本的な知識が要求されます。
以下のようなことを知らない方は、それらを予習しておくことをお勧め致します。
1. アデールとイデールについての知識 (参考として、森田康夫著「整数論」の7章)
2. ハール測度、フーリエ級数、フーリエ変換、岩澤-テイト理論についての簡単な理解 (参考として、森田康夫著「整数論」の10章)
3. 上半平面上の正則保型形式の初歩(参考として、黒川-栗原-斎藤著「数論II」の9章)
跡公式について詳しい勉強をされたい方は、以下の跡公式の入門のために書かれた文献を参照ください。
1. 織田孝幸, Selberg Trace Formula 入門.
2. 今野拓也氏のホームページの講義ノート、概説原稿のページに跡公式の概説原稿のファイルがあります。このサマースクールに関係した原稿のタイトルは「Arthur-Selberg 跡公式 ---構成と応用---」、「跡公式の安定化 --- 楕円正則項」、「玉河数について」です。
3. S. Gelbart, H. Jacquet, Forms of GL(2) from the analytic point of view, Proceedings of Symposia in Pure Mathematics 33 Part 1 (1979), 213--252.
4. J.-P. Labesse, La formule des traces d'Arthur-Selberg (The Arthur-Selberg trace formula), Seminar Bourbaki, Vol. 1984/85. Astérisque No. 133-134, 73--88, 1986.
5. A. W. Knapp, Theoretical aspects of the trace formula for $\GL(2)$, Representation theory and automorphic forms, American Mathematical Society, Proc. Symp. Pure Math. 61 (1997), 355--405.
6. A. W. Knapp, J. D. Rogawski, Applications of the trace formula, Proc. Symp. Pure Math. 61 (1997), 413--431.
7. J. Arthur, An introduction to the trace formula, Clay Mathematics Proceedings 4 (2005), 1--263.
- プログラム (時刻やタイトルなどの変更はあります)。 プログラムと講演の概要のPDFファイル
9/6(月)
10:20-12:40 プレサマースクール: GL(2)上の保型形式とHecke作用素 (森山)
14:00-14:50 参加受付
15:00-16:30 Selberg跡公式 (権)
16:45-18:15 GL(2)の跡公式I (都築)
20:15-21:45 Selbergゼータ関数 (権)
9/7(火)
9:15-10:30 GL(2)の跡公式II (若槻)
10:45-12:00 GL(2)の跡公式III (若槻)
13:30-14:30 Eichler-Selberg跡公式 (伊吹山)
14:45-16:15 Jacquet-Langlands対応I (都築)
16:30-18:00 Jacquet-Langlands対応II (都築)
20:15-21:45 院生とポスドクの時間
竹森翔 「degree $2$の$p$進Siegel-Eisenstein級数」
原隆 「ガロワ表現の円分$p$-進ゼータ関数の合同式について」
大下達也 「円単数のEuler系と実Abel体の岩澤加群の高次Fittingイデアル」
9/8(水)
9:15-10:30 GL(3)の跡公式I (若槻)
10:45-12:00 GL(3)の跡公式II (若槻)
13:30-15:30 安定跡公式と志村多様体 (安田)
16:00-18:00 内視論入門 (今野)
20:15-21:15 来年度以降のサマースクールについての討論
9/9(木)
9:15-10:30 移行因子と基本補題 (今野)
10:45-12:00 楕円項の安定化 (今野)
13:30-14:30 応用---玉河数 (今野)
14:45-16:15 ユニタリ群の安定跡公式I (平賀)
16:30-18:00 ユニタリ群の安定跡公式II (平賀)
19:00- 懇親会
9/10(金)
9:15-10:45 ユニタリ群の安定跡公式III (平賀)
11:00-12:30 ユニタリ群の安定跡公式IV (平賀)
12:45- 昼食 --- 昼食後終了
- 問い合わせについて
第18回整数論サマースクールに関するお問い合わせは、下記のアドレスにご連絡
ください。
若槻聡
〒920-1192 金沢市角間町 金沢大学理工研究域数物科学系
E-mail:
- 本サマースクールは以下の研究費によって援助を受けています。
基盤研究(A): 多変数保型形式の算術的構造と跡公式の明示的研究 (課題番号: 21244001) 代表者: 伊吹山 知義
基盤研究(A): 多変数保型形式と高次元モジュラー多様体の解析・幾何・整数論 (課題番号:19204001)代表者: 織田 孝幸
京都大学グローバルCOEプログラム「数学のトップリーダーの育成」
若手研究(B): 多変数保型形式の空間上のヘッケ作用素の明示的跡公式 (課題番号: 20740007) 代表者: 若槻 聡
- 謝辞
このページは2009年度サマースクールのホームページを元に作りました。落合理さん、使用を許可してくださり、ありがとうございました。
- サマースクール世話人:
- 平賀郁(京都大学)
若槻聡(金沢大学)